研究概要 |
ダイヤモンドに限らず、溶液法で高純度単結晶を作製する基本的事項は、溶解度の圧力、温度による変化、核発生過程、溶解析出過程、育成セルの温度分布、温度のゆらぎ、溶媒の化学的性質特に溶質との親和性、成長機構など非常に多数の要因が複雑に関係している。高純度の完全結晶を作製するためにはこれらの要因を系統的に整理し、実験や計算機シミレーションによって確認する必要がある。残念ながら、大型で完全な結晶を作製する現実的な方法である超高圧溶液法ダイヤモンド育成においても上記の要因はほとんど明かでないまま実際には単結晶育成が試みられている。 本研究は、以上の状況を少しでも打開するためにつぎの項目について研究を行った。 (1)育成条件の確定:Ni,Fe-Co,Fe-Ni,Ni-Ti,Fe-Bなどの溶媒系でのダイヤモンドの合成圧力温度領域を立方体アンビル装置、ベルト型装置により決定し、その精度を検討した。合成領域は育成圧力温度条件と直結する基本的な事項である。 (2)窒素ゲッターとして作用する添加物の検討:Ti,B,Sr,Ca,Mgなどの元素を少量添加した溶媒系でのダイヤモンドの形態、不純物などの評価を行った。 (3)高圧装置と実験系の開発:炭素-溶媒系の相関係特に液相温度および溶解度の決定は重要な事項であるのにほとんど研究されていない。そこで、高圧示差熱分析(DTA)法を確立するため、まず3.5GPaまでの精密測定に適応するピストンシリンダー型高圧装置を試作し、その性能測定技術を確立した。また、立方体アルビン装置によりそれ以上の圧力領域にも対応できるよう装置系の改良を行った。 (4)育成結晶の評価:X線回折、SIMSなど通常の不純物分析手法と電気的性質の対応を研究した。 (5)ダイヤモンドの格子中に安定に存在するNiの結合状態、電子状態を分子軌道法により求めてESR測定データとの対応を求める手法を確立した。これはさらに窒素の状態解析などにも有効な手法である。
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