研究概要 |
1.高導電性ITO薄膜の作製 原料としてInCl_3をアセチルアセトンに溶解させ,60℃で環流を行いSnCl_4のエタノール溶液を必要量取り室温で混合することにより出発溶液を得た。この場合,イソプロパノールの少量添加によりケト型と呼ばれるC=Oの二重結合から、エノール型の環状構造を持つキレートが形成していた。この溶液に石英基板をディップしてコーティングし,600℃の熱処理により薄膜を得た。抵抗率は,12mol%Snドープ量の場合,1.2×10^<-3>OMEGA・cmの良好な値が得られた。 2.酸化タングステン薄膜 乾燥窒素雰囲気中で六塩化タングステンをエチルアルコールに溶解させ,これにナトリウムメチラートを加え,塩化ナトリウムを沈殿させた上澄み液を出発溶液とした。この溶液に前処理を行なった石英基板上に作製したITO膜上にデイップコーティングを行ない,300℃の低温で熱処理することにより非晶質の良好なWO_3薄膜を得た。 3.固体電解質 過塩素酸ナトリウムを脱水した炭酸プロピレンに溶解させたものを用いた。 4.エレクトロクロミック特性 上記のように作製した透明電極としてのITO膜とITO膜上に作製したWO_3膜及び固体電解質のセルを組み合せ,電極間距離を2mmとして電圧印加による着色変化及び透過率の測定を行った。その結果,エレクトロクロミズム現象を可逆的に行なわせることができる印加電圧は,6Vであり印加後5秒で着色が飽和し約70%の透過率を示した。以上から、1)ゾル・ゲル法により,原料としてInCl_3,SnCl_4を使用し,溶媒にアセチルアセトンを用いることによりITO薄膜の作製に成功した。2)大気中での熱処理(700℃,1hr)で得られた薄膜の抵抗率は,室温で1.2×10^<-3>OMEGA・cmの良好な値を示した。3)WO_3薄膜の着色による透過率変化は,印加電圧と印加時間で変化し,可逆変化が可能であり,6V,5秒で70%の透過率を示し,充分応用化が可能と考えられた。
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