研究概要 |
シクロオクタン脱水素能をもつルテニウムカルボニルクラスター錯体は,配位不飽和種が比較的安定なために,均一系触媒として沸騰還流条件を課し,ターンオーバー約6.9の水素とシクロオクテンを得ることができる。しかしながらシクロヘキサン類の脱水素活性はどうしても発現せず,金属触媒,特に微粒白金,あるいは白金-ルテニウム複合金属触媒に依らねばならなかった。 CS_2[Pt_3(CO)_6]と[Ru(C_6Me_6)_2](BF_4)_2の高表面積炭素担体に対する共浸漬・脱気処理によって,エチルシクロヘキサン脱水素芳香族化活性は著しく向上した。炭素担持白金触媒に対するルテニウムクラスター錯体H_4Ru_4(CO)_<12>の表面修飾もまた,顕著な複合効果を示した。これら金属クラスター錯体の配位子は,カルボニル,ベンゼン置換体,ヒドリドなどと,加熱処理で容易に脱離し,活性サイトに毒作用を示すヘテロ元素(ハロゲンなど)は避けてある。なお,[Ru_3O(OAc)_6(OH_2)](OAc)を陽イオン錯体に選び,白金カルボニルクラスター陰イオンと組合せた前駆体は,親水・疎水性特性が炭素担体のそれと調和せず,良い複合効果を得るにはいたらなかった。 金属クラスター錯体のアルカン液相脱水素触媒作用は,活性サイトを光照射によって創出し,発現させることができる。ルテニウムカルボニル3核錯体よりも,ジホスフィン架橋ロジウム(I)2核錯体およびイリジウム(I)2核錯体の方が,カルボニル配位子光脱離前駆体として優れていた。特にスルフィドS^<2->でも架橋されている,いわゆるA-フレーム錯体は吸収波長域が475(ロジウム)〜520(イリジウム)nmにまで長波長シフトするため,太陽光でのアルカン脱水素活性発現という観点から,興味深いといえよう。
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