研究概要 |
本研究の目的は,高分子鎖の並進拡散係数Dと回転拡散(緩和時間t)を比較し,0次及び1次モードの関係を実験的に解明することである。この目的のため,昨年度はバルク状態のポリイソプレンについて,強制レーリー散乱法によりDを測定し,誘電緩和法によりtを測定した。また誘電測定により二乗平均末端間距離も同時に測定した。これらの結果から無次元量Dt/〈r^2〉を求め理論と比較した。 本年度は昨年に引き続いて,D,t,〈r^2〉の測定をさらに広い分子量にわたって行った。その結果,ポリイソプレンのDは,分子量Mが1万から4万までの範囲ではM^<-2.8>に比例したが,さらに高い分子量域では分子量依存性が弱くなり管模型の予言するM^<-2.0>に近づく傾向が見られた。しかしM^<-2.0>に漸近するかどうかは確認できなかった。一方,低分子量ポリイソプレンにラベルした高分子量ポリイソプレンを少量混合した系では分子量によらずRouse理論の予言するM^<-1.0>によく一致した。またDt/〈r^2〉の値はRouse理論の予言する1/3π^2に一致した。逆に高分子量(M=20万)のポリイソプレンをマトリックスとしてDを測定するとM^<-2.5>に比例し,管模型とは一致しないことがわかった。その他の挙動は昨年度の報告とほぼ同じであった。 次に準希薄溶液での挙動を調べるため,誘電的に不活性なポリブタジエンの準希薄溶液に少量のポリイソプレンをプローブとして加えた系について誘電測定を行ない,t及び〈r^2〉を決定した。ポリブタジエンの極限粘度と濃度を[η],Cとするとt及び〈r^2〉はC[η]の普遍関数なることがわかった。またポリイソプレンとポリブタジエンのブレンド系についても誘電測定を行なったが,Dについては目下測定の準備中である。
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