研究概要 |
昨年度のオリゴイン誘導体の合成およびその固相重合による新規共役高分子の合成と基礎物性評価(3次非線形感受率,X^<(3)>)を受けて,本年,最終年度では単結晶構造解析が可能なオリゴイン化合物の新規合成を行った.さらに,3次非線形感受率と固相重合性との関係についても詳細に検討を加えた.これにより,本研究課題の当初の目的はおおむね達成され,オクタイン,デカインなど,より共役系の拡がったオリゴイン誘導体へのアプローチが可能となったと思われる.以下に本年度の具体的研究成果を列挙する(説明上,昨年度の分と一部重複する). 1.アルキルウレタン系テトライン化合物の合成実験の結果から,内部メチレン鎖を一定にしておくことで,融点を下げずに固相重合性を維持することが判った. 2.先の結果を受けて,外部メチレン鎖の代わりに,アリール基を導入することにより,単結晶構造解析が可能な大きな板状,棒状の結晶が得られた.この場合,ベンゼン環に付いているハロゲンの位置が得られる結晶の晶癖に影響を与えることも明らかとなった. 3.単結晶構造解析の結果はこれまでの固体^<13>C-NMRの帰属を支持するものであったが,テトラインポリマーからラダーポリマーへの第二段階の固相重合は起こり難いこと,従ってジアセチレン側鎖が主鎖に対してさらに傾く必要があることが判明した. 4.X^<(3)>の測定の結果,アルキルウレタン系では置換基の依存性があまりなく,長波長側のUV吸収ピークにおける吸光度とX^<(3)>値は,ほぼ比例関係にあった.一方,アリールウレタン系では重合率が必ずしも高くないため,X^<(3)>値は低くでた.この重合率の向上は今後の課題の一つである.
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