研究概要 |
本研究の目的を単年度で実施するために課題を火山灰土の化学的風化に関する速度論的研究,火山灰の初期風化に関するモデル研究,火山灰降下地の自然環境回復の現地調査の3点に絞って実施した。 1.火山灰土の化学的風化に関する反応速度論的研究 室内の溶出実験によって火山灰土の化学的風化の速度として最も信頼できる成分は酸性シュウ酸塩可溶アルミニウム(Alo)であることを明らかにした。そして,10℃標準化年代とAlo含量との関係から,火山灰土の初期風化は0次反応式で表されること,腐植層が火山灰土壌としての典型的性質を発現するに要する年代(Alo+Feo/2が2%に達する年代)は10℃で1,280年であることを明らかにした。 2.火山灰の初期風化に関するモデル実験 新鮮な火山灰を供試し,硫酸濃度,溶出濃度,および溶出時間を変えて溶出を行った後,中和処理を行い,液相成分と固相成分について各種の測定を実施した。その結果,Aloと酸性シュウ酸塩可溶鉄(Feo)生成はリン保持量や1.5MPa水分保持量と密接に関係していること,火山灰土での作物の重大な制限因子である可給態リンはブレイII準法では初期に増加するがその後減少に転ずること,トルオーグ法ではAlo含量の増加に伴って単調に減少することが明らかとなった。 3.火山灰降下地の自然環境回復の現地調査 本研究のケーススタディとして,1977年の有珠火山爆発による粗粒軽石堆積地を対象として実施した。対象地域では,無植生区を含む6つの異なる植生区について土壌および植生調査を行った。その結果,埋没土壌からの植生回復がみられる区と水分保持が好条件にある区に旺盛な植生回復がみられた(オオイタドリ,ミヤマハンノキ,ドロヤナギ)。また,可給態リン含量が高いことも植生回復に貢献していると考えられた。
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