研究概要 |
イネ科作物における窒素の吸収の規制要因と作物体における動態を明らかにするため,代表的なイネ科作物を3種(水稲,コムギ,トウモロコシ)を選び,^<15>Nを用いて窒素の吸収と転流・再転流の経緯と,葉身における葉色の変動経路について検討した.また,緑肥としてのマメ科作物の鍬込み後における窒素の動態について検討した.得られた主な成果は次のとおりである. 1.水稲の葉身葉半における窒素含有率と葉色は葉位,葉身の部位ならびに内・外葉半で異なり,外葉半は窒素含有率が高く,葉色が濃く,外または内葉半は葉位に対応して左右交互に着正する規則性を示した. 2.外葉半の葉色が濃い要因は,葉半幅が狭く,節根が内葉半側よりも多く,外葉半側の節根から吸収された窒素は外葉半側の葉身に転流し,葉半間における再転流は殆ど認められないことによると推測した. 3.窒素含有率と葉色は高い正の相関関係を示した.水稲において葉色の最も安定している部位は,最上位展開葉の下の第2葉の,葉身の基部と先端との中央部において各葉半の葉縁と中肋との中間部であった.葉色の測定はその部位で行うのが合理的である. 4.コムギの内・外葉半の葉色は水稲と異なり有意な差異は認められず,各葉位および葉身の各部位における葉色の変動傾向も,水稲とはやや異なったが,葉色測定の葉位と部位は水稲に準じてよいことが判った. 5.トウモロコシの外葉半は水稲と同様に葉色が濃く,窒素含有率が高く,葉幅長が狭く,内または外葉半の着正の葉位における交互の規則性も認められたが,葉色の変動傾向は水稲よりも大きかった. 6.マメ科の緑肥作物を前作として用いて鍬込み,後作作物のコムギへの窒素供給の効果と,後作作物が吸収した窒素に占める前作マメ科作物の固定窒素の比率を明かにした.
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