研究概要 |
1.カイコ幼虫の中腸と消化液にみられる二本鎖RNA分解酵素(dsRNase)(至適pH,>7)の精製をDEAE、CMおよびG-75カラムクロマトグラフィーの順に進めた。その結果、いずれのカラムを用いてもdsRNaseの溶出位置にはDNaseおよび一本鎖RNA分解酵素(ssRNase)活性がみられた。このため、CMの活性分画をさらにDNA(native)-Celluloseカラムによって分画したにもかかわらず、依然として三つのヌクレアーゼ活性は分離できず0.25〜0.5MNaClに溶出された。さらに、塩濃度を細分して溶出させたところろ、0.25〜0.3M NaCl溶出部にDNase,dsRNase活性が、0.4〜0.5M NaCl溶出部にDNase,dsRNaseおよびssRNaseが検出された。そこで、0.25〜0.5M NaCl溶出分画を酵素液とし、ssRNAによるDNase,dsRNase活性の阻害がみられるかについて検討したところ、いずれの活性も阻害された。このことは、ssRNAとDNAおよびdsRNAを認識する酵素が中腸と消化液に存在することが分かった。また、本酵素は環状DNA(pUC119)も分解することからdsRNase,DNaseおよびssRNase活性をもつエンドヌクレアーゼ(分子量、23〜25x10^3)であることも分かった。 2.消化液エンドヌクレアーゼは、幼虫から蛹期の変態期に高い活性を示すこと、またこの時期に消化管内腔に幼虫中腸皮膜由来のクロマチン小滴がみられることから消化液エンドヌクレアーゼがクロマチン小滴内DNAの断片化に関与するかについて検討した。このため、5齢6日目の中腸クロマチンと本酵素をin vitroで反応させた所、DNAの断片化が生じた。また、消化液エンドヌクレアーゼは、Mg^<2+>,Ca^<2+>,で活性化され、Zn^<2+>で阻害されることから、カイコ中腸におけるアポトーシス現象に関与すると推察した。
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