研究概要 |
1)A-ファクター非存在下でS.griseusに胞子着生を誘起する遺伝子を4種類取得した。1つは,原核生物の二成分制御系の転写調節因子と相同な蛋白をコードしていた。もう1つは,機能不明な蛋白をコードしていたが,ファージを用いた遺伝子破壊法で明らかに気中菌糸形成に関与することが判明した。本遺伝子は,すべての放線菌に分布しており一般的に気中菌糸形成に関与すると考えられる。 2)ストレプトマイシン生合成遺伝子内のA-ファクター依存性プロモーターに結合するアクチベーター蛋白について,その性状を明らかにした。本蛋白の完全精製には至っていないが,その精製スキームを完成した。 3)S.coelicolorの抗生物質生産をグローバルに調節するafsQ1/Q2遺伝子について種々の解析を行い,原核生物で環境応答を司どる二成分制御系を構成することを明らかにした。afsQに相同な遺伝子は多くの放線菌に分布しており,その一般性を物語るものである。 4)グローバルな抗生物質生産調節の蛋白であるAfsRをリン酸化するキナーゼAfsKの遺伝子のクローン化,塩基配列決定を行った。AfsKは真核生物型のSer/Thr型キナーゼと相同性を有し,大腸菌で発現させたAfsKは自己のSerとTyr残基をリン酸化した。またAfsRのSer,Thr残基をリン酸化し,これらはAfsR,AfsKが真核生物型のリン酸リレー系を構成していることを示している。また,afsK遺伝子の破壊株は抗生物質生産が減少しており,抗生物質生産に深く関与することが示された。一方,その破壊株でもAfsRをリン酸化する活性は残っており,AfsRをリン酸化するキナーゼは一種類でないことが示された。 5)afsK遺伝子はS.griseusのA-ファクター欠損株に胞子着生を誘起し,A-ファクター制御カスケードに蛋白リン酸化が関与することが示された。
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