研究概要 |
この研究は、十数種のコンブ目植物の幼胞子体(葉長約5mm)の葉状部から葉片(約0.5×0.5mm)を摘出し種々の温度、光量下で培養し、カルス細胞の形成と発達および分化の過程を観察し、それらの条件を明らかにすることを目的に行われた。 材料には北海道、青森県、千葉県、神奈川県、和歌山県、島根県などの寒流および暖流域沿岸から得られたアナメ、チガイソ、スジメ、カジメ、クロメ、ツルアラメ、アントクメ、アラメ、マコンブ、クロシオメ、ワカメ、ヒロメの12種を用いた。カルスの形成や発達および分化は温度10、15、20、25℃、光量10、20、40、80μmol m^<-2>s^<-1>、光周期14L:10Dで32日間の培養および観察した。 その結果、葉片の切断部分に形成される最初のカルス細胞は、アナメ、スジメ、カジメ、クロメ、ツルアラメ、アントクメ、アラメ、マコンブの8種では半球状で、チガイソ、ワカメ、ヒロメ、クロシオメの4種では棍棒状であった。カルスの発達はチガイソ、ワカメ、ヒロメ、クロシオメの3種を除く9種で認められた。発達したカルス細胞の色素体は元の葉状体のそれに比べ小さかった。カルスの発達は低光量・低温度下で良好であった。すなわち、スジメ、クロメ、ツルアラメでは15℃,10-20μmol m^<-2>s^<-1>で、カジメは20℃,10-20μmol m^<-2>s^<-1>で、アントクメは15℃,20μmol m^<-2>s^<-1>で、アラメは20℃,10μmol m^<-2>s^<-1>で、ワカメは15℃,10μmol m^<-2>s^<-1>でカルスの増殖が大きかった。カルス細胞から葉状体への分化はアナメ、クロメを除く7種で認められ、早期に分化の起こった条件は高温度・高照度下であった。すなわち、スジメ、マコンブ、ワカメでは20℃,80μmol m^<-2>s^<-1>で、カジメ、ツルアラメ、アントクメ、アラメでは25℃,80μmol m^<-2>s^<-1>で最も早く葉状体への分化が認められた。
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