研究概要 |
1.Nitrofen投与による家兎横隔膜ヘルニアモデル作成に関する報告 胎仔肺発生における偽腺管期の中で日令10〜14の5日間にわたってNitrofen(以下NIP)を経口投与した。総投与量が150mg/kg,200mg/kg,250mg/kg,300mg/kgの家兎は満期に健常仔を娩出した。その新生仔は臨床上横隔膜ヘルニアの症状なく、病理学的検索においても横隔膜の欠損孔はなく、または肺低形成も認められない。しかし、総投与量400mg/kgの家兎の娩出した新生仔はいずれも循環不全による皮膚色の不良を伴い著しく活力が低下しており、数分から数時間で死亡した。病理学的検索では、横隔膜の欠損孔は認めない。肺は実質内出血と肺動脈壁の肥厚が散見される。これは、NIP投与により誘導されるラット横隔膜ヘルニアモデルの肺病理所見と共通するものである。以上よりNIP投与量の増加と投与時期の検討から横隔膜ヘルニアの発生は充分に期待できる。 2.NIP投与によるラット横隔膜ヘルニアモデルの肺界面活性物質の測定 胎仔肺発生における偽腺管期に相当する日令9に250mg/kgのNIPを経口投与した。回収新生仔総数(対照群10を除く)37頭中、右横隔膜ヘルニア(右CDH)5(13.5%)、左横隔膜ヘルニア(左CDH)7(18.9%)、横隔膜ヘルニア無形成(無CDH)24(64.9%)である。各群の右肺、左肺別に肺体重比を求める。その後、リン脂質量をレシチン換算値をして求め総リン脂質肺重量比を算出する。肺重量比においては、対照群が右肺/左肺=15.54/8.17に対し、右CDHは12.12/6.38、左CDHは11.63/5.09であり有意差を認める。総リン脂質肺重量においては対照群が右肺/左肺=24.15/24.11に対し、右CDHは14.97/14.46,左CDHは16.15/20.88であり有意差を認める。以上より、肺低形成の程度は、総リン脂質肺重量比の方がより鋭敏に反映する。今後は肺リン脂質の詳細な分画の検討により胎仔期に肺低形成の診断のみならず、その重症度まで予測することが期待できる。
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