研究概要 |
1)成人生体部分肝移植用に必要な部分肝の安全な摘出方法、保存法の確立について:ラット、ブタ実験モデルで20%〜50%の大きさの部分肝摘出の手枝をほぼ完成した。肝保存に関しては、これまでのUW液ではラット肝保存は24時間が限界あったが、今回開発したフサンリンス保存液では48時間の保存が可能になった。本液はKが低い細胞外液型の電解質液である点も有利である。 2)肝細胞増殖因子の検索及び同所性成人部分肝移植への応用の可能性について: ブタ部分肝切除モデルで作った肝細胞増殖因子は力価がやや不安定で、ブタにおいて適当な増殖因子は見つかっていない。 3)異所性成人部分肝移植: 子ブタを用いドナーより摘出した50%部分肝を肝動脈、門脈を結紮した肝不全モデルのレシピエントの肝下部に移植し再生肥大し、充分な機能を持つ同体重間の異所性成人部分肝移植モデルを完成した。 4)抗接着分子抗体の作製と部分肝移植への応用: 部分肝虚血再灌流障害の防止:ウィスター系ラットを用い、90分間の70%部分肝虚血モデルを作製、虚血5分前に抗白血球接着分子抗体(mAb)である抗ICAN-1,CD11a,CD18抗体を静脈内投与した。mAb投与は、好中球浸潤、肝過酸化脂質生成を有意に抑制し、肝ATPを有意に改善しラット生存率を有意に改善した。エンドトキシンショック:ICRマウスにエンドトキシン(LPS:30mg/kg)を腹腔内投与し、同時に抗CD11a,CD11b,CD18,ICAN-1,LECAM-1抗体、メチルプレドニゾロン(MP)30mg/kgを静脈内投与した結果、マウスの生存率は著明に改善し、肝過酸化脂質の上昇は抗CD18抗体及びMP投与により抑制された。これらの成績は、成人部分肝移植臨床に大いに役立つ知見である。
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