研究概要 |
患者末梢血全血よりRNAをAGPC法にて抽出し、各種サイトカインDNA配列より設定した約20bpのプライマーをDNAを合成機で作製し、RT-PCR法を行うことによりサイトカイン活性化を迅速且つ容易に測定する系を開発した。この測定系を用いて、種々の病態下におけるサイトカインmRNAのマッピングを行った。即ち、腎移植患者や腎移植後の慢性拒絶反応患者について検討した結果では、正常人や術前患者ではいずれのサイトカインmRNAも活性化されていないにもかかわらず、腎移植患者ではIL-1,IL-2R,TNFのmRNAが検出された。さらに、サイトカインmRNAマッピングにより移植拒絶反応のモニタリングが可能か否かを明らかにする目的で、腎移植以外の病態で末梢血中のサイトカインmRNAを検討した。対象としては、慶應義塾大学外科に入院し胃全摘や胆嚢摘出術などの手術を行った12症例と重症感染症10症例である。これらの患者から末梢血を採取し、IL-1,IL-2,IL-2R,TNFのmRNAをRT-PCR法にて測定したところ、術前にはいずれのサイトカインmRNAも検出されなかったが、術後1日目にはIL-1,TNFのmRNAが検出されたが、術後3日目には再びいずれのサイトカインmRNAも検出されなくなった。重症感染症症例でも、IL-1,TNFのmRNAは検出されたが、術後患者と同じくIL-2,IL-2RのmRNAは検出されなかった。これらの事は、末梢血中のIL-2RmRNAは腎移植患者もしくは腎移植後の慢性拒絶患者にのみ特異的に発現することを示しており、末梢血中のサイトカインmRNAマッピング行うことにより拒絶反応のモニタリングが行える可能性を示唆している。今後は、IL-2RmRNAの定量化を試み,IL-2RmRNA発現量と拒絶反応の重症度が一致するかどうかなどを検討して行きたいと考えている。
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