研究概要 |
初めに,LAK細胞を用いた悪性グリオーマ患者に対する養子免疫療法の有効性を高める目的で,グリオーマ組中での過剰発現を認めた上皮成長因子受容体(EGF-R)に対する抗体を,アビジン-ビオチン法を用いて,LAK細胞に結合させ,このLAK細胞の臨床応用の検討を行った。この操作で得られたエフェクター細胞は,従来のLAK細胞に比べ,20%以上の細胞障害活性を示し,ヘルパーT細胞よりからも同様のLAK細胞を誘導できることから,腫瘍局所での効率的なエフエクター細胞の誘導に効果的なものと考えられた。次いで,グリオーマ細胞のオートクライン機構に基づく増殖機構に関与すると思われる諸因子を遺伝子レベルで調節しその増殖を制御する,いわゆるアンチセンス療法を試みた。ヒトグリオーマ細胞における各遺伝子の発現形式を検討するとTGFアルファーが5種の細胞に検出され,neu,c-mycも,各々,3種類の細胞に認められた。これらの各遺伝子に対するアンチセンスオリゴマーのヒトグリオーマ細胞への取り込み能を検討するとアンチセンスTGFアルファーオリゴマーを1microM加えると分裂細胞数は,3,4日目より著明に減少し,センスオリゴマーを加えても変化は認められなかった。更に,TGF alphaに対するモノクローナル抗体を加えると,この抑制効果は増強され,一部のグリオーマ細胞では,約20%にも抑制されるようになった。他の増殖因子に対するオリゴマーを用いた検討では一定の傾向は認められず,モノクローナル抗体の併用効果は認められなかった。以上の結果は,グリオーマ細胞の分裂増殖へのTGFアルファーの深い関与を示しており,そのアンチセンスオリゴマーの応用によるグリオーマ細胞の増殖機構の制御まで可能と考えられた。
|