研究概要 |
人工心肺による生命維持法(古くはECMO,最近はECLAあるいはELSとも呼ばれる)が,欧米および我が国で実用化に近づき,各種研究会が次々に発足している。経皮的血管確保法による呼吸循環補助はpercutaneous cardiopulmonary support:PCPSと呼ばれ,僅か4年前には,国内で20数例が行われたのみであったが,平成5年度末までには,500例を越えようとしている。しかし,これらの学会でしばしば論じられているのは,いわゆるECMOのentry criteria重症度の基準であって真の適応ではなかった。 新しい治療法の適応決定に当たって,その治療法による治癒率,救命可能性,患者の重症度は重要な要素ではある。しかし,医療の中には,将来の長い生命予後を期待できなくても,また病気を根治できなくても,現在の問題解決のために必要な生命維持法がある。また,PCPSの概念と簡易な体外循環方法の導入により,予防的体外循環の概念も導入されてきた。 我々は1965年に重症CO_2蓄積患者を人工心肺により救命しえて以来,一貫して人工心肺による生命維持法の研究を推進して来た。生後7時間の新生児から70歳代の高年者まで各年代の各種成因による呼吸・循環不全に対する本法適用の臨床例を,平成5年度末までに60例経験した。 我が国でPCPSの症例が急増した原因の一つには,我々が改良を指導してきた膜型肺の進歩が大いに関与している。人工心肺による生命維持法が世界的な流行に入ろうとする前に,本法の基礎的,臨床的研究により安全化をはかり,本法の方法論と適応を確立できたと考えている。
|