研究概要 |
子宮内膜症の増殖機序と治療薬剤による内膜症萎縮効果の発現についで検討した。内膜症組織は性ホルモン受容体(ER,PR,AR)を保有するが、ダナゾールは内膜症PRならびにARとの結合を介してその増殖を抑制する可能性が示された。一方、従来の報告とは異って、ダナゾールは卵巣におけるいずれのエストロゲン生合成酵素活性をも阻害しなかった(Endocrinol Japan39:615,1992,In Vivo 7:127,1993)。GnRHアゴニストは下垂体GnRH受容体のダウンレギュレーションを惹起し、ゴナドトロピン分泌とE_2産生を抑制したが、ダナゾールには視床下部-下垂体-卵巣系に対する有意な抑制作用を認めなかった(Fertil Steril,in press)。子宮内膜癌をモデルとして内膜症の血管新生を検討した結果、内膜組織はTGF-βやFGFなどの血管新生因子を産生・分泌することが示されたが、プロゲスチンMPAはこれら血管新生因子の産生・分泌を抑制することにより内膜症の増殖、進展を抑制する可能性が示唆された(Am J Obst.Gynocol 167:207,1992,Int J Cancer 54:862,1993)。 子宮内膜症患者66例を対象に薬剤併用療法の臨床試験を行った。その内訳は、ダナゾール単独17例、ブセレリン単独26例、ダナゾール・ブセレリン併用23例である。腹腔鏡診断による内膜症治療の効果判定を行った本試験成績により、治療薬剤ダナゾールとブセレリンの内膜症萎縮効果が証明された。しかしながら、その明らかな効果発現は軽症内膜症において認められ、進行期の重症内膜症病変においては観察されなかった。内膜症病変の活動を反映すると考えられる血中CA125濃度は薬剤併用療法群でより有意に低下したが、併用群には重症例が多く含まれたために病変の改善は有意なものとはならなかった。今回集積された症例数からは結論できないが、作用機序の異なる薬剤併用療法についても、その効果に一定の限界が存在するものと考えられた(Am J Obst Gynecol 167:271,1992,Fertil Steril,in press)。
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