研究概要 |
根管起因の蜂巣炎,閉鎖性の膿瘍,成人性歯周炎を有する患者および感染症を有しない患者からPrevotella intermedia 338株を分離した。閉鎖性膿瘍6症例中3症例はP.intermediaを,1症例はFusobacterium nucleatumを,残り2症例はP.orisとBacteroides pneumosintesを主要構成菌としていた。DNA-DNAハイブリダイゼイションの結果,供試したP.intermediaのうち約70%はATCC 25611グループ(相同性値68〜88%),約30%はATCC 33563グループ(相同性値68〜87%)であった。 供試P.intermediaは線毛を有する株と有しない株に分かれ,線毛は幅の狭い短いものと幅がやや広く長いものにわかれた。紫外線でバクテリオファージを誘発すると供試菌の約60%でバクテリオファージが検出された。アガロース電気泳動後にエチジュウムブロマイドで染色してプラスミド保有の有無を確認すると約30%の菌株がプラスミドを持っていた。β-ラアクタマーゼ産生株は,閉鎖性膿瘍由来の場合アンピシリン耐性株の約50%の菌株から検出された。β-ラクタマーゼ活性は基質アンピシリンおよびセファゾリン共に認められたが,後者の場合が活性は大きかった。供試菌の病原酵素活性を調べたところ,トリプシンとキモトリプシンを除く酵素で産生がみられた。酵素産生株の割合は,概してヒアルロニダーゼ,リパーゼおよびレシチナーゼで高かった。 比較的長くて幅の広い線毛は性線毛の可能性があり,薬剤耐性との関連で特に注目している。Prevotella intermediaが口腔細菌の中では薬剤耐性化しやすいことは既に研究者らが明らかにしている。したがって、本菌の口腔における耐性因子の検出と伝達は口腔感染症の治療上大変興味のあるところであり,今回得たP.intermediaは貴重な研究材料となるものと期待している。
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