研究概要 |
1.コンポジットレジンは繰り返し荷重により疲労亀裂が進展し,その進展にはParis則(da/dN=C(ΔK)^m)が適用できた.金属材料に比べると,da/dN-ΔK線図の傾きmは大きく,亀裂進展の下限界値ΔK_<th>が小さく,亀裂が安定進展するΔKの範囲はきわめて狭いものであった.また傾きmはレジン間の差は顕著ではなく,疲労亀裂の進展抵抗はおもに亀裂進展の下限界値ΔK_<th>の値に左右されることが示された. 2.コンポジットレジンの疲労亀裂の進展はおもに無機フィラーのフィラー・マトリックス界面でおこることから,crack deflection,crack bridgingなどの高靭化の機構がフィラーによってもたらされていることが示唆された.また亀裂は有機複合フィラーを貫通することから高靭化への有機複合フィラーの寄与は無機フィラーに比べて小さいと考えられた. 3.水中保管後の曲げ強さの低下にむすびつかないコンポジットレジンの劣化を疲労亀裂進展試験によって評価することができたことで,疲労亀裂進展試験がコンポジットレジンの劣化を早期に判定できる有用な方法であることが示唆された. 4.水中保管でコンポジットレジンの疲労亀裂の進展抵抗が減少した.これはマトリックスレジンが劣化し,亀裂の進展経路がフィラー・マトリックス界面からマトリックスレジンに一部変化したことにより,フィラーによる高靭化の機構が十分に働かなくなったことが理由として考えられた. 5.コンポジットレジンの高靭化にはマトリックスレジンの耐水性の向上,フィラーの形態の検討,フィラー・マトリックス界面の結合力の適正化をはかることが重要であることが示唆された.
|