研究概要 |
本研究では、根管内細菌によるヒト末梢血からの炎症性サイトカイン、とくにTNFとIL-6の誘導能を調べた。まず最初に、これまでの報告をもとに根管内から高頻度に分離される菌株9菌株(P.intermedia,P.gingivalis,P.endodontalis,P.melaninogenica,P.asaccharolytics,F.nucleatum,A.actinomycetemcomitans,P.acnes,M.rteus)を選び出し、それぞれの菌の増殖に適した培地を用いて大量培養を行った。その後、これらの乾操菌体を調整し、実験に用いた。次に、多発性でかつ難治性の根尖病巣を有する患者5名のヘパリン加末梢血を採取し、これらに先の乾燥菌体を添加した。in vitroで1日培養した後、培養上清を回収した。その後、これらの培養上清中のTNF活性をL929細胞に対する障害作用で、またIL-6活性をMH60.BSF2細胞の増殖を指標にしてMTT法でそれぞれ調べた。なお陰性対照には、根尖性菌周炎に罹患していない健常者の末梢血を用いた。その結果、多発性で難治性の根尖病巣を有する患者末梢血では健常者のそれに比べて、被験菌体による有意に高いTNFおよびIL-6誘導能を示した。とくにP.intermedia,P.asaccharolyticsおよびP.melaninogenicaの3菌株に対して強いIL-6誘導能を、またP.intermediaに対して強いTNF誘導能を示した。以上の結果から、これら4菌株が、根尖性歯周炎の起炎菌として重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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