研究概要 |
デュアルキュアタイプのレジンセメントは,ライトキュアの性質が強く,インレー体を透過する光線量はその重合硬化にとって重要な因子となることが指適されている。そこで,臨床的な光線照射条件の光学的検討を行うとともに,それぞれの条件が本セメントの硬化物の理工学的性質におよぼす影響について検討を行ってきたが,現在までの実験の進行状況ならびに得られた知見について報告する。 1.光線照射条件 光線照射条件を検討するにあたって,光源である照射器に着目し,その光強度ならびに分光波長分布の測定を行った。その結果,光強度,分光波長分布ともに機種による違いは大きく,光強度については同一機種であっても,製造番号が異なれば測定値にも差が認められた。 レジンセメントに対する光線照射条件としては,光強度,照射時間および照射時期の変更ならびにセメント液に対する前照射方式について検討を加えた。 2.レジンセメントの物性 光強度ならびに照射時間を変更して,レジンセメントの物性を評価したところ,セメント硬化物の物性は光エネルギー依存性があることが判明した。とくに歯質接着性の点からは,光エネルギーが等しければ,光強度および照射時間が変わっても得られる測定値はほとんど同じとなる傾向が認められた。 光線照射時期として前照射方式を用いた場合,セメント泥の硬化時間は,セメントに照射を行わなかったものに比較して短縮し,また被膜厚さはほぼ同程度となった。また,製造者指示の照射方法に前照射を加えることによって,圧縮強さならびに曲げ強さの測定値は向上することが判明した。 以上の知見を元に,今後さらにこのセメントの臨床使用条件を確立するための検討を継続して行う予定である。
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