研究概要 |
本研究では,1回法と2回法による植立術式の違いによって生じる界面構造の相異を明らかにする目的で,動物実験により以下の組織学的ならびに形態計測学的検索を行った。 実験1:ビーグル成犬6頭を用い,抜歯後3カ月を経過した下顎右側前臼歯部にチタン合金およびジルコニアインプラントをそれぞれ3本ずつ植立し,以下の各実験群における界面構造を比較検討した。すなわち,(1)1回法で植立後直ちに上部構造物を装着して機能圧を負荷する第1群,(2)1回法で植立後上部構造物を装着せず軟性飼料で飼育する第2群,(3)2回法で植立後粘膜で完全に被覆する第3群の3群(各2頭)とし,植立3カ月後にインプラント周囲組織の光顕観察を行うとともに,骨接触率を計測した。実験期間中,インプラントの動揺や脱落は認められず,組織学的にも全てのインプラント周囲に骨接触界面が見られた。しかし両インプラントの第1群では,頬側で骨縁レベルが低下した。骨接触率はチタン合金では第3群で他の2群より有意に高かったが,ジルコニアでは第3群が最も低い値を示し二回法への応用が困難なことが示された。 実験2:6頭のビーグル成犬を用いてチタン合金インプラントを植立し,実験1と同様の3群を設け,第2群および第3群では,植立3カ月後に上部構造物を装着し,上部構造物装着12カ月後の界面構造を観察した。全てのインプラントで骨接触が証明されたが,第1群では骨縁の吸収のため頬側でねじ山が2つ程度露出していた。骨接触率は,第3群,第2群,第1群の順に高く,いずれも第3群の値が他の2群よりも有意に高かった。以上の実験結果より,チタン合金インプラントにおいて広範な骨接触界面を得るためには,インプラント植立初期に安静状態を維持することが重要であることが明らかとなり,とくに安静状態を粘膜下で確保できる2回法の優位性が示唆された。
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