研究概要 |
当科で樹立,維持しているヒト悪性黒色腫細胞株(HMG)に対するモノクロナール抗体(IA6-C2)および同抗体をペプシン処理後、還元したFab'をシスプラチン封入リポソームに結合し(Ab-Lip-CDDP,Fab'-Lip-CDDP)、悪性黒色腫細胞に対する抗腫瘍効果をin vitroでシスプラチン封入リポソーム(Lip-CDDP)、シスプラチン(CDDP)と比較検討した.また,担悪性黒色腫(HMG)ヌードマウスに投与しプラチナの組織内濃度を測定した. モノクローナル抗体はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。抗体とリポソームの結合にはS-S結合架橋剤であるSPDPを用いたが,Fab'では抗体のSH基を利用した.リポソームは構成脂質として卵黄フォスファチジルコリン,コレステロール,フォスファチジルエタノールアミンとSPDPの合成物質(DPT-DPPE)をモル比26:10:0.4で作成した.封入シスプラチン量を原子吸光分光光度計によるPt定量から測定し,封入効率は約3%であった.さらに,安定性について,放出シスプラチン量を経時的に測定し,37℃培養液(RPMI 1640+20%FBS)中では,24時間後に封入量の56%,48時間後には72%が放出された。4℃PBS中では24時間後に12%,48時間後で14%の放出がみられ,最低48時間は保存状態で安定であることが示された。 in vitroで悪性黒色腫細胞と正常線維芽細胞にPBS封入リポソームを投与したが,細胞動態に変化はみられず,リポソームの構成成分に毒性はみとめられなかった。in vitroでのHMGに対するAb-Lip-CDDPの抗腫瘍効果は,Lip-CDDPの約2.1倍,CDDPの約20倍であり,他の2群に比し有意差を認めた.しかしFab'-Lip-CDDPでは,CDDPと同等の効果であった.in vivoにおけるAb-Lip-CDDP投与時のプラチナの組織内濃度は腫瘍でLip-CDDPの約1.4倍,CDDPの約2倍であった.腎臓ではLip-CDDPの約0.7倍,CDDPの約0.5倍に減少した.
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