我々は鎮静量のフルニトラゼパムが動静脈吻合(AVA)を通じて静脈血を動脈血化させることを報告し、鎮静度とPv02との間に相関性が成立する可能性も示した(平成2年度科学研究費成果報告書)。しかし、SEPの測定は複雑なので、測定の容易なパラメータを用いて鎮静度に相関する可能性を検討することが必要と考えられる。今回、ミダゾラムについても検討を加えるとともに、両薬の手背皮膚血流量と皮膚温に及ぼす影響を観察した。研究(1)男子学生6名を対象とし、0.07mg/kgのミダゾラムを投与し、120分後まで肘窩の末梢静脈血血液ガス分析、循環動態、鎮静度、呼吸数(呼吸モニタOMR8101、日本光電)を測定した。研究(2)男子学生20名を対象とし、0.015mg/kgのフルニトラゼパムまたは0.07mg/kgのミダゾラムを投与し、手背部の皮膚血流量(ALF21、アドバンス)、平均皮膚温(サーモトレーサ6T67、日本電気三栄)の測定を行った。その結果、(1)ミダゾラムによりPv02はほぼ30分まで上昇し、P02とpHの動脈血・末梢静脈血較差はほぼ15分後まで減少し、静脈血が動脈血化された。心拍出量は低下し、収縮期・拡張期血圧は低下し、呼吸数は増加した。これらの変化は心拍出量の低下を除き、フルニトラゼパムより持続時間は短く、減少の程度は少なく、臨床的な鎮静度の評価に一致する傾向がみられた。(2)手背皮膚血流量はフルニトラゼパムでは75分後まで、平均皮膚温は60分後まで、Pv02は45分後まで上昇し、ミダゾラムでも同様の変動が見られたが、持続時間は短かった。またAVAが多い部位である指尖爪床部から温度が上昇する様子が観察された。したがって、ミダゾラムはフルニトラゼパムと同様にをAVAを拡大させるが、程度は少なく、臨床的な鎮静度と相関する可能性が示された。なお、鎮静度については、SEPとPv02・皮膚血流量・皮膚温との相関について今後検討する予定である。
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