研究概要 |
ブルーム症候群の原因遺伝子マッピングの決定の試みは,従来より連鎖解析により行われてきたが,現在までのところ詳細な座位は報告されていない。 本研究では,ブルーム症候群由来の細胞で姉妹染色分体交換(SCE)が高頻度に観察される特性を利用して,微小核融合法を用いて種々の正常細胞由来の染色体をブルーム症候群由来の2種類の不死化細胞(SV40形質転換細胞GM8505および自然形質転換線維芽細胞GM1492E)に導入し,SCEが正常頻度になる染色体の同定を行った。はじめに,正常ヒト線維芽細胞由来のpSV2neo遺伝子で標識した染色体を1本含むマウスA9細胞より微小核細胞を調製し,上述の2種類のブルーム症候群の細胞とそれぞれ微小核細胞融合を行い,G418による選択培養によって,耐性クローンを分離した。それぞれ得られたクローンについてSCEの測定を行った、。その結果,ヒト15番染色体を導入したクローンでは,2つの細胞株において同様に顕著なSCEの補正効果が認められた。さらに,補正効果の認められたクローンについて染色体解析を行ったところ,自然形質転換線維芽細胞(GM1492E)の移入クローンにおいて,導入染色体が完全な状態で保持されていたクローンおよび親細胞では認められない構造異常を伴った15番染色体を保持しているクローンが確認された。また,SV40形質転換細胞(GM8505)のすべての移入クローンにおいては,移入染色体の存在が確認できなかった。これらのクローンについて15番染色体特異的RFLPマーカーを用いた解析をおこないつつある。このように,ブルーム症候群の原因遺伝子は15番染色体上に存在していることが強く示唆された。 今後は、染色体の一部が移入された細胞のSCEの頻度と移入染色体部位との相関を調べ、詳細な遺伝子マッピングを行う。
|