研究概要 |
ラットのアジュバント炎症性痛覚過敏が、NMDA受容体拮抗薬APV(1-30nmol)、非NMDA受容体拮抗薬CNQX(1-30nmol)及びNK-1受容体拮抗薬CP-96,345(0.3-10nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与で抑制された。アジュバント炎症下では、NMDA(1nmol)及びAMPA(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与で惹起される仮性疼痛反応が増大したが、substance P(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与による反応は増大しなかった。ラットの反復低温ストレス性痛覚過敏が、APV(1-30nmol)、CNQX(1-30nmol)、CP-96,345(0.3-10nmol)、抗substance P抗体の脊髄クモ膜下腔内投与で抑制された。反復低温ストレス性痛覚過敏の状態下では、NMDA(1nmol)及びAMPA(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与で惹起される仮性疼痛反応が増大したが、substance P(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与で惹起される仮性疼痛反応は、増大あるいは増大傾向が見られた。脊髄後角におけるNMDAR1受容体mRNAおよびNK-1受容体mRNAの発現をin situ hibridization法で調べたところ、アジュバント炎症により、NMDAR1 mRNAは後角表層で、NK-1 mRNAは後角深層で発現レベルの上昇している傾向が見られたが、発現細胞数の比較では明らかな増加を観察できなかった。以上の結果から、アジュバント炎症性痛覚過敏と反復低温ストレス性痛覚過敏に脊髄後角におけるグルタミン酸作動性シナプス伝達とsubstance P作動性シナプス伝達の促進が関わっていることが示唆されるが、アジュバント炎症性痛覚過敏の機序として、NMDAR1受容体及びNK-1受容体の生合成の増加の関与を積極的に支持する証拠は得られなかった。
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