研究概要 |
神経難病として厚生省特別疾患に指定されているパーキンソン病の霊長類による疾患モデルを作成し,このモデルの有用性を検討することと、D_1アゴニストの作用を観察することが本研究の目的であった.小型のサルであるマ-モセットの2才のオス及びメス(体重280-350g)にMPTP4mg/kg/weekを1-2週の間隔で皮下に注射すると,急性の症状が消失した後にアキネジアや振戦などのパーキンソン症状が12カ月間以上も持続する.このようなマ-モセットのパーキンソン病モデルに,ドパミンD_2受容体アゴニストのLY141865を0.5mg/kg腹腔内に注射すると,アキネジアの回復がみられたが,D_1受容体アゴニストのSKF38393の1-20mg/kgではアキネジアの回復が見られないばかりか,D_2アゴニストのLY171555の回復効果を抑制する結果が得られた.またドパミンD_1受容体のフルアゴニストであるSKF82958の0.5-1.0mg/kgあるいは部分アゴニストのCY208-2430.5-1.0mg/kgの筋肉内注射によって,マ-モセットは吐き気,嘔吐の発現が見られたがパーキンソン症状はSKF38393の場合と異なり,D_2アゴニストのquinpiroleと同様に改善された.このD_1アゴニストによる自発運動量の増加はD_1アンタゴニストのSCH23390の0.3mg/kgの5分前投与によって拮抗された.正常なマ-モセットの線条体に血液透析膜を用いた透析プローブを挿入して,人工髄液で潅流し潅流液中のドパミンおよびその代謝物を高速液体クロマトグラフで測定した.SKF38393の腹腔内投与は潅流液中のドパミンおよびその代謝物の量を増加させたが,同じD_1アゴニストであるSKF82958あるいはCY208-243では変化しなかった.またD_1アンタゴニストのSCH23390は細胞外ドパミン量が増加した.このことはSKF38393がアンタゴニスト作用をもっている事を示唆している.この実験中にSKF82958によってけいれんが発現することを観察し,マウスを用いてSKF82598のけいれん発現作用を確認した.
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