配分額 *注記 |
6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
1994年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1993年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1992年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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研究概要 |
糖尿病性慢性合併症の予防と治療は極めて重要な課題であり,本研究でその発症機序におけるポリオール経路の意義,特にヒトアルドース還元酵素の分子機構とその関連におけるミオイノシトール代謝,培養血管内皮細胞における高血糖による遺伝子レベルの変異を中心に検討した。 1.ヒトアルドース還元酵素(AR)と近縁酵素とのアミノ酸配列との相同性から推測される基質結合部位,触媒部位の中心的役割を担うアミノ酸を他のアミノ酸に置換した。変異の導入はmutagenic oligonucleotide methodにより行った。作成した変異遺伝子の塩基配列を確認し,バキュロウィルス-昆虫細胞系を用いて変異ARを発現させ精製した後,酵素活性,基質,阻害剤に対する親和性の変化を検討した。その結果,Lys-263が基質や阻害剤との結合に重要な役割を果たすアミノ酸残基であることが示された。 2.ヒトARcDNAを導入したトランスジェニックマウスの解析を行ない,腎や肝などの多くの臓器にヒトARmRNAと蛋白の発現を認めた。病理組織学的には6週齢の腎血管に血栓形成,糸球体にcapsular drop様の変化を認めた。従って,糖尿病性合併症の標的臓器はAR活性の亢進によって障害を受けやすいことが示唆された。 3.糖尿病性血管障害の発症機序の1つして,高血糖あるいはその代謝物質(ソルビトールなど)による機序が考えられる。培養ヒト血管内皮細胞を用いて検討した結果,高グルコース濃度下において血小板由来成長因子(PDGF)産生能はmRNAレベル,蛋白合成レベルともに有意に亢進した。また,イコサペント酸はこのPDGF産生を抑制した。 4.以上より,ヒトARの性状と糖尿病性合併症発現におけるその意義の一面を明らかにし,更に高血糖による遺伝子レベルでの変異の知見を得た。
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