研究概要 |
毎日軽度の運動を行い,菜食(緑黄の野菜500g,大根,人参,やまのいもなど500g,玄米140gを1日に2回に分けて,加熱しないで生のまま)を摂取するボランティアを対象とし、体組成および骨塩代謝の変化を調査した。その結果,1.対象者が秤量し記録したものから算出した摂取エネルギー量,タンパク質量は各自の所要量の約50%であったが,カルシウムの摂取量は所要量を充足していた.2.菜食開始6ケ月後に,第3腰椎の骨塩密度(Dual energy X-ray absorptiometry法)は有意な減少を示したが,腰椎の総骨塩量および全身の骨塩量には変化は認められなかった.3.菜食摂取時のカルシウム出納は維持されていたが,窒素およびリンの出納は負の傾向を示し,除脂肪組織の減少が示唆された.次に中高年女性(ボランティア)を調査開始前よりすでに菜食を継続していた継続群(10名)と調査開始前には普通の食事をしていた非継続群(21名)の2群に分け,体脂肪率をBioelectrical Impedance法で測定し,体組成の変化を6週間にわたって観察した.その結果,1.非継続群において菜食6週間で,体重は約10%減少したが,体重減少のほとんどは体脂肪の減少によるものであった.継続群の体組成は,調査6週間でほとんど変化を示さなかった.2.調査開始前の摂取タンパク質量と菜食時の摂取タンパク質量の差が大きいほど,体重,体脂肪の減少量は大きかった.エネルギー摂取量の差は影響していなかった.除脂肪組織の減少量には,食前歴の影響は認められず,調査開始前の除脂肪重量とのみ有意な正の相関を示した.3.非継続群では,体燃焼エネルギー値と摂取エネルギー量の合計は,菜食開始前の摂取エネルギー量に近い値を示した.4.重水希釈法を用いて測定した体水分量は調査開始6週間後で有意に減少し,水分の貯留は認められなかった.継続群の成績から,このような低エネルギー、低タンパク食に適応する可能性も示唆されたが、普通の食事からこのような低エネルギー、低タンパク食に変えるときは、体重減少を抑制するために、タンパク質の補給が重要であることが示唆された。
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