研究概要 |
ヘム生合成系の中間産物は光感剤として,可視光があたると活性酸素を発生するケースがある。大腸菌の可視光による応答・発現制御には活性酸素が関与する場合があることを,これまでの一連の研究で明らかにしてきた。ヘム生合成系の解明は本研究課題に重要と考えて研究を進めた。 大腸菌のΔvisA(=ΔhemH)株は光感受性であるが,この株から光抵抗性の復帰株を分離することにより,heme生合成に関与する遺伝子の変異株を容易に得ることが出来た。それらの変異株を利用して, (1)これまで遺伝子解析がなされていなかった遺伝子のhemEおよびhemGのクローニングと塩基配列の決定を行なった。 (2)heme生合成に関与する2つの新しい遺伝子を発見した。hemKと名命した遺伝子は226アミノ酸からなるタンパク質をコードしており,hemA-prfA-hemKのオペロンを構成していること,この遺伝子の欠損によってプロトゲンの蓄積は見られるが,プロトIXの蓄積がないことから,HemG関与のステップに働いていると思われる。もう1つの新しい遺伝子についても小原クローンによる相補実験から座位を決定し,現在塩基配列を調べている。 (3)大腸菌hemA^-,hemH^-の変異株を相補するクローンとして,大麦とキューリからcDNAの単離に成功し,遺伝子の塩基配列を決定した。光合成に重要なクロロフィル合成系は途中のステップまでheme合成系と共通であり,単離した植物遺伝子を呼吸や光合成の研究に役立てたいと考えている。 (4)hemHはプロトポルフィリンIXに鉄を入れる酵素,フェロキラターゼをコードしているが,この酵素の大量発現系を構築し,大量精製を行なった。精製酵素の生化学的・物理化学的性質を調べると共に,結晶化に着手しX線回折による高次構造の解析を進めている。
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