研究概要 |
本研究の目的は半導体レーザを外部共振器を用いて発振させ,高分解分光などの実験に適した周波数安定,狭線幅,連続同調可能なレーザ装置を開発することである. 半導体レーザを外部共振器で動作させるため結晶端面にSiO無反射膜を蒸着した.残留反射率を厳密に極小化するため,発振出力のモニターの感度を向上させるとともに,記録紙上に経時変化を記録し,極小点が予測できるように工夫した.その結果,連続同調の優れた素子を再現性よく製作できるようになった. 一方で外部共振器を試作した.まず,各自由度の感度を調べるために安定性を犠牲にして,多くの自由度が調節できる構造のものを作成した.その後に,不要な自由度を固定した機械的に安定なものを設計製作した. 蒸着を施した半導体レーザと外部共振器を組み合わせることで,25nm以上にわたって連続波長可変なレーザシステムを構築できた.波長可変性のデモンストレーションとして,1つのレーザでカリウムとルビジウムそれぞれのD線に同調できることを確認した. また,レーザ冷却したルビジウム原子の吸収分光を行ったところ,非常に細い吸収線を観測することに成功し,レーザ発振線幅が狭窄化されていることも確認された. 実験と平行して,外部共振器半導体レーザの理論モデルをつくり,実験で得られた発振特性との比較を行った. 以上のように,市販の安価な半導体レーザを用いて,周波数安定,狭線幅,連続同調可能なレーザ装置を実現する方法を開発することが出来た.
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