研究概要 |
1.薄膜の弾性定数を計測するため,精密3点曲げ試験装置および固有振動数計測装置を開発した.それぞれの装置について,性能確認試験を実施したところ,両装置共に,薄膜のヤング率を有効数字3桁で計測可能であることが判明した. 2.精密3点曲げ試験装置を用いて,Co-Ta-Zrの1μm〜10μmの薄膜のヤング率を計測した結果,3.5μm以上の薄膜では150GPaで一定であったが,3.5μm以下の膜厚では,膜厚の減少に伴ってヤング率が上昇する傾向が観察された.1μmの以下の膜厚のヤング率は250MPaであり,4.5μmのそれの約1.7倍の値となった.ヤング率の膜厚減少に伴う増加現象について,膜厚の表面エネルギーを用いて考察した.引張によって薄膜に蓄積されるエネルギーとして,弾性ひずみエネルギーと新生面の表面エネルギーとのバランスから,薄膜の膜厚減少に伴うヤング率の増加を定性的に説明することが出来た. 3.今回開発した振動リ-ド法によるヤング率計測装置を用いて,Cr薄膜のヤング率を測定した.Co-Ta-Zr薄膜と同様に薄膜の膜厚減少に伴ってヤング率が増加する現象が確認された. 4.これらのことから,薄膜のヤング率は膜厚の減少に伴って増加する傾向が試験を行った範囲で共通の現象であることが確認された.
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