研究概要 |
今年度は,前年度に製作したUHF波帯干渉計システムにより,夏季雷及び冬季雷の観測を行った。システムは,2組のアンテナ系とそれら2本ずつの出力を一組として受信する四組の干渉計(受信周波数327MHz,帯域幅350kHz)により構成され,A/D変換器を通してワークステーションに入力され可視化処理が行われる。夏季雷の観測は大阪府吹田市の大阪大学屋上にて行われたが,トリガ等の問題により雷の測定は行えなかった。冬季雷の観測は,石川県金沢市奥獅子吼山のロケット誘雷実験場及び福井県三方郡美浜町のレーザ誘雷予備実験場において行われ,多数のロケット誘雷及び自然雷の測定に成功した。これらの結果,UHF波は電界の変化に伴って放射されていることが確認され,干渉計により抽出される位相差は,UHFパルスの放射に伴って連続的に変化していることが確認された。これらから,本システムにより雷放電路を可視化することは妥当であると評価した。この雷放電に伴って放射されるUHFパルスの位相差から可視化処理を行った結果,明らかに雷放電路と思われる標定点群が得られ、本システムによる雷放電路の可視化に成功した。特に,長スパンのアンテナ系を併用した場合,前年度のシミュレーションの結果から予想されたように,位置精度が向上することが実雷においても確認された。さらに,本システムでは,放電位置を1μsecの時間分解で求めることが可能であり,雷放電の進展過程を再現することに成功した。なお,これらの結果をもとに雷放電の進展機構を現在解析中である。
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