研究概要 |
パルスアーク放電条件(放電電圧,放電ガスの圧力等)を変化し,Y系酸化物高温超伝導薄膜をMg0(100),SrTiO_3(100)基板上に作製した。マルチチャンネル分光分析システムを用い,発光種の同定およびプラズマ温度の算定に成功した。また,オフアクシスマグネトロンスパッタリング法やレーザアブレーション法を用いてY系超伝導薄膜を作製し,さらに発光種の同定やプラズマ励起温度を算定し各種文献のデータとも比較検討した。 作製薄膜の特性は走査電子顕微鏡(SEM),X線マイクロアナライザー(EPMA),4端子法による抵抗-温度特性測定装置や薄膜X線回折装置を用いて分析した。EPMAにより薄膜の組成は放電条件に依存するもののほぼターゲットの組成に近い薄膜をパルスアークプラズマ法で得ることができることがわかった。同じパルスプロセスとしてパルスKrFエキシマレーザやパルスYAGレーザを用いたパルスレーザデポジション法につても比較実験検討を行い,C軸配向したY系超伝導薄膜をMg0(100)基板のみならずYSZバッファー層を用いることによりハステロイおよびインコネル金属基板上にもパルスレーザデポジション法で作製することに成功した。またレーザデポジション機構を有限要素法を用いて一部明らかにした。さらに,超伝導薄膜の保護膜として立方晶窒化ポロン(cBN)薄膜の作製も行い,従来にない方法でcBN薄膜の作製に成功した。またパルスアーク法において装置制御等で問題となる電磁ノイズ対策等についても一部検討した。以上のように,本研究の初期の目的は充分達成された。今後さらにパルスアークプラズマおよびパルスレーザを用いたパルスプロセスの進展により極めて新規な成果が得られることが予想され,この方面の課題を精力的に研究することは学術的および工業的観点から非常に重要であると思われる。
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