研究概要 |
本研究は,がんの温熱療法に用いるマイクロ波加温用アンテナ(アプリケータ)として生体との接触性が良く,高効率なものを開発すると共に,開発したアプリケータを使用し,タイムドメイン法を用いたアクティブ法により,生体内部の温度変化を生体外部に直接接触したアプリケータから発射される,微弱なマイクロ波の透過波測定によって推定する新しいアプリケータシステムの試作を行った. 開発を行ったアプリケータは,比較的比帯域の大きい誘電体ロッド,サイズの小型化が可能なマイクロストリップおよび柔軟性の高いマイクロストリップパッチ等であり,アプリケータにより照射される電磁波の分布をFD-TD法(Finite difference time domain method)により求め,これによる発熱分布を熱輸送方程式に代入し,がん組織を含むモデル内温度分布を調べることでがん組織モデルの温度上昇を推定し,加温範囲についての比較検討を行った結果,430MHzを用いた加温ではマイクロストリップ,マイクロストリップパッチ,誘電体ロッドアプリケータの順で加温範囲,深度が大きくなることが明かとなり,患部の形状,大きさによりアプリケータの選択使用が可能となった. さらに患部加温時,患部のインピーダンスに温度依存性があることを利用して周囲に配置したアプリケータ間の透過係数変化をネットワークアナライザにより広い周波数範囲で求め,得られた結果を逆フーリエ変換して時間域透過係数を求め,患部内部の温度推定を行う手法を提案し,基礎実験により温度精度±0.5℃を得た.実験的には生体モデル周囲に配列したアプリケータに対して,加温に用いる発振器,温度推定を行うために用いるネットワークアナライザをRFスイッチで交互に切り替え,上述の加温法および温度推定法を用い加温,温度推定を行う生体モデル最適加温システムの試作,評価を行った結果,良好な結果を得た.
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