研究概要 |
1.耐蝕性ならびに延性に優れた金属間化合物の開発 Ni3(Si,Ti)基本成分にCu(0.5-3at.%),Ta(1-4at.%),B(0.001-0.01%)を添加したものが,従来材料ハステロイDやインコネル50より耐硫酸性が優れかつ非常に良好な延性を有する金属間化合物を見いだすことに成功した。 2.クリープ特性に優れた金属間化合物の開発 耐熱性に優れたNi3(Si,Ti)-Co3(Si,Ti)擬二元系金属間化合物の開発を試みた結果、Ni-Ti(7-11at%)-Si(5-12)-Co(1-30)からなる成分にTa,Nb,Cr,Fc,Alの少量複合添加によりインコネル718より優れたクリーブ強度が得られた。 3.鋳造用の高硬度金属間化合物基合金の開発 優れた耐食性,鋳造性、研磨性,切削性を示し,かつ高い硬度を有するNi3(Si,Ti)基金属間化合物を開発することが出来た。その結果、表面性状に優れた時計側用部材や精密機械部品に適用可能であることが示された。 4.超塑性を示す金属間化合物の開発 加工/熱処理法により約3^〜5μmの結晶粒径からなるNi3(Si,Ti)合金が,1073K^〜1173Kの温度範囲,5x10-4/s以下の歪み速度で超塑性変形することを見いだした。これにより、本合金が多様な加工成形により製造可能であることが、また、この加工により優れた機械的性質が得られることが示された。 5.スケールアップと実働試験 Ni3(Si,Ti)ならびにNi3(Si,Ti)+Nb合金の健全な鋳塊を作製した。これら鋳塊より,切削ならびに放電加工により高温引張試験機用治具ならびに高温熱処理用部材を作製し、予定した性能を確認した。 6.成分元素間の結合状態の理解 開発が試行されている合金の良好な高温強度、耐蝕性,延性の発現の原子的理解が,核磁気共鳴による成分元素(特にSi,Ni,B)間の結合状態と結晶構造に関する研究によりなされた。 7.特異な変形挙動の理解 本合金に高硬(強)度,優れた耐熱,耐摩耗特性を与えている機械的性質と結晶塑性の基礎的理解のために、単結晶を用いた結晶塑性の温度依存性、方位依存性ならびに組成依存性の理解に努め、変形転位組織と構造を電子顕微鏡観察により系統的かつ詳細な研究を行った。
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