研究概要 |
高温でのフッ化アルミニウムの気相加水分解反応を利用したCVD法によりアルミナウィスカ-の合成を試みた.ウィスカ-の生成に重要と考えられる実験因子として,(1)キャリヤガスの種類,(2)反応温度,(3)キャリヤガス流量,(4)水蒸気分圧などの諸因子を変化させて合成した.その結果,原料を加熱・蒸発させ,それをキャリヤガスにより輸送させながら基板上に結晶化させる1段式合成法を用いると,1200℃の合成温度で,最長約2cm程度まで成長した長いウィスカ-を合成できた.得られたウィスカ-は反応管の壁面から中心部に向かって成長しており,その先端部分にはドロプレット状の粒状物が存在していることから,Vapor-Liquid-Solid(VLS)機構で成長したと判断された.また,ドロプレットの組成分析から,液相の生成には不純物としてカリウムとナトリウム成分が関係していることが分かった. 合成したウィスカ-の引っ張り強度をIwanagaら(1992)の方法および自作した特殊な持具を用いた方法で測定した.その結果,引っ張り強度は,著しい断面積依存性を示し,10μm^2の断面積のとき数GPaの値を示した.しかし,この値はLevitt(1966)の報告した引っ張り強度の値よりも1〜2桁程度低かった.X線光電子分光法でウィスカ-の表面分析を行ったところが,フッ素成分が残留していることが分かった.そこで,フッ素成分が残留しないようなさらに高温条件下でのウィスカ-合成を2段式合成法で試みた. この合成法では,金属鉄を不純物として添加し,基板にムライト磁器を用いるとウィスカ-が生成した。しかし、その生成収率は非常に低く,長さも1段式電気炉で合成したウィスカ-よりも短かった.
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