研究概要 |
これまで続けてきたルイス酸を活用する新規合成反応の開拓研究を基礎に,2,2-ジアルコキシシクロプロパンカルボン酸エステルとカルボニル化合物の反応を検討した。アルデヒドとの反応においては,ルイス酸として四臭化スズあるいは四臭化チタンを用いて反応を行うと,極めて高い選択性でシス-3,4-置換-γ-ラクトンが高収率で得られることを明らかにした。また,対称ケトンと3-一置換シクロプロパンの反応においてはルイス酸として四塩化チタンを用いるとシス-2,3-置換-γ-ラクトンが高選択的かつ高収率で得られることを見出した。さらに,γ-ラクトンの三中心連続立体制御を試みた。その結果,四塩化ジルコニウムを活性化剤として用いれば,2,3-シス,3,4-トランス-三置換-γ-ラクトンが高選択的に得られることを見出した。この反応を利用して,苔より抽出され植物成長抑制作用を有する天然物,ジヒドロペルツサル酸の合成を行い、その簡便な合成法を確立した。しかし、天然由来のラクトンは,従来の構造の帰属に誤りがあることが明かとなった。すなわち,天然物の構造は2,3-トランス,3,4-シスの立体配置で,申請者らの反応では主生成物としては得られないものであったため,天然物そのものの合成は出来なかった。また,ジヒドロペルツサル酸の簡便な合成法,および,ラセミ体の光学分割法は確立できたが,この非天然型のラクトン及び合成中間体も抗菌活性などの調査を行った結果,期待していたほどの生理活性を示さなかった。 さらに,ルイス酸を用いる新規合成反応の開発の一貫として,二価のゲルマニウム化合物を用いて種々の反応を検討した結果,ヨウ化ゲルマニウム(II)とハロゲン化アリルからin situでアリルゲルマニウム(IV)試薬を調製し,カルボニル化合物と反応させると対応するホモアリルアルコールが得られるBarbier型の反応を見出した。
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