研究分担者 |
安宅 喜久雄 宇部興産株式会社, 宇部研究所(研究員), 課長
今田 泰嗣 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (60183191)
直田 健 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (20164113)
細川 隆弘 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (90029520)
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研究概要 |
現代の有機工業化学が必要とする合成反応は,位置および立体選択性が高度に制御された効率の良い触媒反応であることは言うまでもない.省資源,省エネルギーの観点に立ったこのような触媒反応の開発は,現代の合成化学者に課せられている一つの課題でもある.特に,還元反応に比較して酸化反応の制御は未だ充分に達成されているとは言い難い.本研究課題ではこうした観点から.オレフィンの不斉酸化および位置選択的酸化反応を実用性のあるプロセスに発展させることを目的とした. 1.オレフィンの不斉アセタール化反応の開発と精密有機化学工業への展開 パラジウム錯体と銅塩の複合系触媒を用い.分子内に不斉助剤を組み込んだメタクリルアミド誘導体の不斉アセタール化反応を検討した.その結果,本不斉反応は光学活性アルデヒド前駆体を効率良く,しかも高選択的に与えることを見い出した.この不斉アセタール化反応を応用して,第4世代の抗生物質として注目されている光学活性1β-メチルカルバペネム前駆体の合成法を開発した.本反応は大量スケールでの実施が可能で,光学活性アセタール化合物の新合成法となり精密有機化学工業への寄与が期待できる. 2.オレフィンのアルデヒド体への位置選択的酸化反応の開発 非水溶媒中でパラジウム錯体と銅塩等をヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)と組み合わせた複合系触媒を分子状酸素存在下で用い環状アミド骨格を持つアリル系化合物からアルデヒド体を選択的にが合成できる手法を見い出した.この反応系に水を加えると,アリルオレフィンの内部炭素が酸化されケトン体が得られた.このように酸化反応の位置選択性が逆転する現象はこの分野で例を見ない.アリル系オレフィンの酸化反応で二官能性化合物を得る既存の方法はなく,本法はオレフィンからアルデヒド体の新合成法となる.
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