研究概要 |
本試験研究は我々の見いだしたパラジウム触媒を用いるベンゼンの直接酸化によるフェノールの一段階合成反応に基づき、その工業化を目指して検討を進め以下に要約する成果を得ることができた。 1.パラジウム触媒 触媒としてはPd(OAc)_2の他にPd(acac)_2,Pd黒,Pd-Cでも進行するので工業的な観点から高い可能性を有する。Pd(OAc)_2/Phen/O_2/CO系でフェノール選択率91%の場合,フェノール収率1270%(Pd基準,ベンゼン基準では5.6%)が得られ,さらにCOなしでは選択率は56%に減少するが,フェノール収率50,000%に達し,ターンオーバー数に関しては当初の目標に達することができた。なお本触媒系はアルカンのC-H結合も活性化することが分った。 2.反応機構 ^<18>O_2を用いる反応からフェノール-^<18>Oが得られることよりフェノールの酸素はO_2からきていることを確認した。またCO^<18>Oが生成することよりCOはPdに配位してO_2を活性化して,一つのO原子を受けとりCO_2として除く役割とビフェニルの生成を防ぐ二つの役割をしていることも分った。 3.還元剤としてのCOに代る添加剤 COの共存はフェノール選択率を向上するがフェノール1モル生成に対し4モルのCO_2が生成しているのでコストの面からCOに代る添加剤を検討した結果n-メチルモルホリンをPd(OAc)_2/phen/O_2系に添加するとフェノール収率4060%,選択率91%と好成績が得られた。この反応ではモルホリンがO_2と反応してN-オキシドに変換され,そのときに生成した活性酸素がPh-Pda錯体に挿入してフェノールが生成すると考えられる。さらにPd(OAc)_2/O_2系にヘキサフルオロアセチルアセトンまたはビピリジルメタンを添加すると,それぞれ830%,950%収率でフェノールが選択的に得られることも明らかになりCOを用いないPd触媒系も開発することができた。
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