研究概要 |
寒冷地の篤農家で行われている水稲の薄播き・無加温育苗の有利性と不利益性を明らかにし,育苗法の改善や本田管理作業の改善への応用を試みた. 移植時の苗が分げつを持つためには,箱当たり播種量を中苗の半分以下の40g程度の薄播きにする必要がある.40gの播種量で,葉齢を6葉程度確保すれば2号分げつの発生が80%以上の苗でみられ,水田に移植したとき2号分げつはほとんど有効化して,穂数の確保と収量の確保に貢献した.無加温育苗法により,葉齢が進み,2号分げつの発生した苗を得ることができたが,32℃の育苗器で1日加温,または明条件で2日加温してハウスに並べる方法も無加温育苗並みの苗を得るのに有効な育苗方法であることが見いだされた.分げつのある成苗を1株を2本にして移植し,人為的に欠株を生じさせた.欠株周囲の株に補償作用がみられた.その結果,栽植密度が22.2株/m^2(30cm*15cm)の場合,収量(大冷害年の実験では不稔籾が多発したため,収量を籾数で考察した)へ影響を及ぼさないと考えられる欠株率は,連続しない欠株であれば20%,2株および3株の連続欠株であれば約10〜8%であった.箱当たり約40gの播種において,手播き散播では播種精度が不良で,田植機械で移植したときに収量へ影響を及ぼす程度以上の欠株が発生した.成苗用に開発された2種類の播種機(条播式および播種板式)が欠株許容範囲内の欠株率であり,実用的であった.しかし,散播様式ではみられなかったことだが,この2様式では播種時の理論上の欠株率よりも,機械で移植したときの欠株率が高くなる傾向がみられた.これは,規則的に播種されている分,籾の位置と機械の掻き取り位置が微妙に異なることの影響を受けたためと推察された.欠株だけでなく,1株の苗数が1本の割合も考慮すると,実際の移植時の1株本数を意識した播種精度向上のための対策が必要とみられた.
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