研究概要 |
胎仔あるいは新生仔ラットの脳幹細胞、線条体細胞及び副腎細胞を、SV40T/TS遺伝子を導入したψ2細胞シート上あるいは同細胞条件培養液添加培地中で培養し、SV40T/TS遺伝子の導入を行い、in vitroで増殖能をもつ細胞をえた。 遺伝子導入後の増殖期に、培地中にEGF,FGFあるいは線条体細胞条件培養液を加えると、導入細胞の増殖が促進された。 上記細胞を増殖させた後(4週間)、G418でセレクションし、8種類のG418耐性の脳幹細胞(MS-1,2,3)、線条体細胞(STR-1,2)及び副腎細胞(AD-1,2,3)をえた。 各細胞は33℃では増殖能をもち(doubling time,約4週間)、39℃では増殖を停止した(温度変異性)。 チロシン水酸化酵素免疫染色性は、MS-1とAD-1だけが陽性であった。一方、MS-2,3及びSTR-1,2はneurofilament,GFAPともに陽性であった。 MS-1及びAD-1をパーキンソン病モデルラットの線条体に、STR-1,2を脳虚血モデルラットの線条体にそれぞれ移殖した。各細胞ともに移殖2週間後迄は生着したが、4週間後には免疫活性が低下し、機能の改善をもたらる迄には至らなかった。 本研究で開発した細胞が脳内で長時間生着できない理由は、現在のところ不明である。移殖細胞をとりまく種々の環境因子による修飾、あるいは温度変異性を合せもつので、生存・生着が阻害されやすいのかもしれない。遺伝子の導入により開発した細胞の移殖によって、障害された脳機能の改善を計るためには、移殖細胞が脳内で安定して生着することが前提となる。これには、長期にわたる安定した遺伝子発現を可能とする内在性のプロモーターの探索・選択が必要である。
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