配分額 *注記 |
11,600千円 (直接経費: 11,600千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1993年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1992年度: 6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
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研究概要 |
心筋細胞レベルにおける作用機序の検討により,新しい強心薬の開発のための細胞レベルにおける検討を行なった。本研究で実験的に作用機序が追求された種々の化合物の中でOrg 30029[N-hydroxy-5,6-dimethoxy-benzo[b]thiophene-2-carboximide hydrochloride]はもっとも興味深い強心薬である。この化合物はいまだかって存在しなかった強力な強心薬である。このような新しい作用機序による化合物(Caセンシタイザー)の臨床的有効性に強い期待がもたれる。Org 30029の化学構造を一部修飾したOrg 3731はCaセンシタイザーとしての効果が顕著に減少しPDEIII阻害作用が著しく増強された。このことは両作用を惹起する薬物結合部位に高い類似性が存在することを示唆する。また本研究でPDE阻害薬の細胞レベルにおける機序の詳細が明らかにされ,臨床使用に有用な以下の新知見が得られた。 (1)哺乳類心室筋でcAMP加水分解に関与しているPDEアイソザイムには著しい種差が見られる。 (2)PDE阻害薬は(1)直接的作用と(2)交感神経刺激増強作用の二つをもつが,前者は後者よりもずっと高い薬物濃度を必要とする。 (3)PDE阻害薬のなかにはPDEIII阻害作用のほかに化合物特有の付加的作用をもつものがある。これらの強心薬は生命予後改善作用をもち,これがどのような機序により発揮されるかの解明は今後の検討に委されている。 (4)cAMPは トロポニンIのリン酸化にともなわれてトロポニンCのCa感受性を減少させる。本研究においてβ受容体刺激は[Ca]o上昇に比してCa感受性減少作用を示したが,PDEIII阻害薬は前者と異なりCa感受性減少作用を惹起せずその薬理学的なプロフィールが異なっており細胞内cAMPコンパートメントの存在を示唆している。新しい強心薬の臨床応用への道のりはまだまだ長く基礎的研究成果に基づくこれらの薬物の的確な臨床的評価と同時にさらなる新しい化合物の合成・開発への努力の積み重ねが必要である。
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