研究概要 |
平成4年度、5年度の2年間に新たに3種類のヒトソマトスタチン受容体(SSTR1〜5)遺伝子のクローニングに成功した。SSTR1,SSTR2,SSTR2はそれぞれ418個、388個、364個のアミノ酸から構成されていた。SSTR3〜5のヒト種々の組織での発現をNorthern blotで検討したところ、SSTR3は脳で発現が認められた。SSTR3はラットの膵ランゲルハンス島で高レベルの発現が認められた。一方、SSTR4,SSTR5は検索し得た正常ヒト組織には発現が認められなかったが、SSTR4はヒト膵臓癌由来のMIA PaCa-2細胞に発現が認められた。SSTR3〜SSTR5の薬理学的特性をソマトスタチンや種々のアナログを用いて検討したところ、ソマトスタチン-14とはいずれもIC_<50>が2nM以下と高親和性を示した。さらに、種々のソマトスタチンアナログ、RC160,CGP23996,SMS201-995(octreotide),SMS201-354([Orn^5]-octreotide),SMS217-717([Citrulline^5]-octreotide)との薬理学的特性を検討した。画像診断や薬物治療にすでに臨床使用されているSMS201-995はSSTR2と最も高い親和性を示した。種々の内分泌腫瘍で5つのサブタイプの発現をreverse-transcriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)により検討を行ったところ、グルカゴノーマの2例ではSSTR5を除きすべてのサブタイプの発現が認められた。インスリノーマの4例では、症例によりサブタイプの発現の多様性が認められた。カルチノイドでの1例はSSTR1と4のみ発現が認められた。SSTR201-995は臨床的にグルカゴノーマでは有効、カルチノイドでは無効であったことより、SMS201-995を利用した画像診断や薬物治療の有効性は、腫瘍におけるSSTR2の発現の有無が1つの決定因子となる可能性があることを示した。また、CGP23996もSSTR2と高親和性を示すことからこのアナログも潜在的に有効である可能性がある。
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