研究概要 |
本研究では、集団的資源利用状況として新たな実験パラダイムを提案した上で、実際の被験者行動を解析し、理論的解析ならびにシミュレーション結果とを総合的に分析した。ここで新実験パラダイムとは、複数の資源を複数の個人が利用する状況であり、これまでの単一資源を複数の個人が利用するという実験状況と異なり、はるかに現実社会との対応が明確となった。本研究の骨子は本年度中に雑誌発表されている。 初年度は主として実験パラダイムの構想を具体化し、構造を解析し、また、簡単な実験を行った。それぞれの個別状況としては、2種類の固定量資源(X,Y)が存在する場合に,利用者グループAは資源Xのみを,グループBは資源Yのみを,グループCはX,Yのいずれかを選択して消費するという場面を設定した。2つの資源の利用者数はグループCのメンバーがXを選ぶかYを選ぶかに依存する。初年度においては、2資源3グループの実験パラダイムのもとで3人(A、B、Cそれぞれ1人)、4人(A,Bがそれぞれ1人、Cが2人)のゲーム事態を設定し,定量的,定性的な分析を行なった。次年度においては、初年度に行なわれた実験結果の一般化として、5人(A,Bがそれぞれ1人、Cが3人)の事態を設定して分析した。 実験データの分析に基づけば,大きな特徴として,被験者グループが完全な調整戦略を利用することが判明した。完全調整戦略とは,同一の資源を利用する複数のプレイヤーが,コミュニケーションが禁じられた場面であっても,互いに要求量を調整して,トータル要求量が資源量に等しくなるよう調整することである。この結果は,事前に行なわれたコンピュータ・シミュレーションならびに、相互推定ストラテジーによる解析結果とはかなりの食い違いを示しており、定量的なアプローチによる従来の意志決定理論よりも,定性的なアプローチとしてのディシジョン・ヒューリスティックスの考え方が妥当な方向であることが示唆されたことは貴重な知見である。
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