研究概要 |
リラクセィションスキルと運動スキルという対照的なスキルを取り上げ,習得過程を追跡する研究方法の開発と両スキルに共通する習得過程を明らかにすることを目的として以下の研究を行った. 1.運動スキルの習得過程を明らかにするため一輪車走行スキルに着目し,その習得における認知-運動過程を検討した.まず初心者が一輪車走行を習得できるまでの過程を追跡し,次に一輪車走行が可能になった者と熟達している者の,認知,運動,生理的側面を比較した. 2.リラスセィションスキルについては,まず日常生活のストレッサーに対処するための方略を調査した.その結果,呼吸調整が代表的なリラクセィション方略であることを見いだした.そこで,呼吸調整とストレスそしてリラクセィションの関係を検討するための実験研究を行った. 3.呼吸調整がミクロなリラクセィションとすれば,マクロなそれについては,弛緩体操として知られる野口体操を素材にした研究を行った.とくに,身体の動きから弛緩を測定するという方法と弛緩スキル習得過程における認知-運動表出の関係について検討を加えた. 以上の3つの視点に立った研究から,リラクセィションスキルと運動スキルという一見対照的なスキルの習得プロセスに共通項が見いだされた.すなわち,一輪車習得にはリラクセィションの深化過程が存在し,野口体操習得には一輪車と近似した身体調整ストラテジーが存在した.身体調整という課題に直面した時,人間がとる一般的な方略とプロセスが存在することを示唆している.こうしたプロセスを教授なり,援助がどのように修飾できるかが次ぎなる研究課題になる.
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