研究概要 |
本研究の目的は,昨年度の報告に引き続いて,子宮内被曝がラットの生後における行動と環境への適応に及ぼす影響について検討することである。被験体としてフィシャー系(F344/Du Crj)ラットを用い,交配の翌朝に膣栓が認められた雌を妊娠0日とした。妊娠15日に^<60>Cガンマー線(0.27,0.48,1.46Gy)を1回全身照射した。また,飼育のための手続き等は昨年度の報告と同一である。 成熟した雄ラット(23週齢)を用いて,回転かご事態におけるシドマン型回避条件づけを行った。回転かごの1/2回転を反応として検出した。R(反応)-S(電撃)間隔を20秒,S-S間隔を5秒,電撃持続時間を0.2秒と定め,40日間訓練した。その結果,高線量(1.46Gy)照射群における訓練初期の平均反応数は他の群よりも有意に多かった。このことは,高線量照射群はバースト状の反応を頻発したことを示唆している。今後は,このような能動回避条件づけに(反応生起に電撃を随伴させる)受動回避条件づけを組合せた実験を行って,さらに検討する必要があろう。 また,別の成熟した雄ラット(21週齢)を用いて,Olton型迷路を用いた食餌性学習実験を行った。通常の手続きによる飢餓動因を負荷したのち,20日間訓練した。なお,報酬として約50mgの餌粒を各走路端に置いた。その結果,高線量照射群における誤選択反応数(すでに餌を摂取した走路を再び選択すること)は他の群よりも有意に多かった。このことは,高線量照射群の作業記憶(working memory)が何らかの障害を受けていることを示唆する。 高線量照射群のみが,報酬性及び嫌悪性の学習障害を示した。問題は低線量照射群の学習障害を検出することであり,“微細な"学習障害を検出するために,実験方法等に一層の工夫が必要であることを痛感した。
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