研究概要 |
1.ランダムドットステレオグラムを用いて、透明な面が見える条件を実験で調ベた。その結果、二つの面の視差の差が2min以内なら1つの面が知覚されるが、差がそれ以上大きいと2面が知覚された。ただ、上の面が透明であるかどうかの判定はむずかしく、単にそれぞれの面が切れ切れに断片的にまとまって、見えることもある。 2.つぎに、単眼視において透明な面が見える条件を再検討した。これは画像強度と面の反射率・透過率などの関数になっている。これまでのエピスコティスタモデル(Metelli,1970;Beck & Ivry,1988;Gerbinos,1990)を中心とする透明感形成モデルの再検討を行った。 3.つぎに両眼立体視アルゴリズムの内、2重の面が見えるアルゴリズムを再検討した。これに対するアルゴリズムは、Prazdny(1985),Nishihara(1988),Lehky and Sejnowski(1990)のものがあるが、いずれも不完全である。特に知覚される面のはっきりとした不連続感を説明できていない。 そこで、「視覚大脳皮質の計算理論」の立場から両眼立体視アルゴリズムの再検討を行った。特に、光学および逆光学の操作をいかに実現させるかを問題にした。また面の補間過程に透明感の情報をいかに導入するかが中心的問題である。乾ら(1990)が提案した首尾一貫性保持機構の考えに基づき、モジュール間の相互作用の関係をモデル化し、川人・乾(1990)が提案した高次視覚野のモデルをより精緻化することを試みた。 この結果は、本年の日本心理学会で発表予定である。
|