研究概要 |
研究発表の項を参照してもらえば明らかであるが,全部で13編ある。そのうち主要なものの内容を概説することによって概要を示そう。最初の重要なものは,発表6の「おかしさの計量心理学的研究」という女子美術大学の紀要にのせてもらったものであるが,雑誌ライフの「おかしな」写真を刺激に用いて,ガットマンのスケーログラム分析の手法に従って,1次元のおかしさのモノサシを作った。 スケーログラムは順位尺度でしかないので,さらにシェフェの一対比較法を用いて,間隔尺度にまで改良した。再現性係数は約0.9であった。次の重要なものは発表12で,「落語,漫才,CMの特徴比較」という,人間工学会誌に掲載されたものである。上記のものを被験者にビデオで見せ,おかしさ評定の合計で見ると,漫才と落語,漫才とCM間には有意な相関があった。よく笑う人かどうかを見るには漫才が,ユーモアのセンスを見るには,落語を聞かせるのが良さそうである。最後の重要なものは発表13で,「枝雀による落ちの4分類の実験的研究」という人間工学会誌に目下投稿,審査中のものである。落語家である枝雀が考え出した落ちの4分類は,我々のSD形式のイメージ評価によっても有効なものであることが示された。ただ,枝雀の分類はあくまでも落語を語る(=作り出す)側からの分類であり,これまで我々が行ってきた分類は聞いているものの側からの分類であるので,今後は両者の間のギャップを埋めていく努力が必要であろう。なお,現在,これまでの研究歴が興味深いということで,ある出版社から出版したらどうか,との話が筆者のもとに舞い込み,そのことをも検討してみようと思っているところである。また,今回の研究歴の前に,すでに20編の,笑いに関する研究発表があることを,ここにつけ加えておく。
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