Turner(1976)は、本当の自己と見なされる自己が、制度すなわち社会に共有されている目的の達成に係り集合体の課す義務に従う時に見出されると本人自身に了解される制度的自己と、他の拘束を受けることなく自己の自発的な行動によって自己の欲求の充足に向かう時に自己の存在感を見出す衝動的自己を区別する必要があること指摘している。 一方、孤独感の研究から出発したRubenstein&Shaver(1982)は、心理的な親密感が欠如することによって生じる情緒的孤立に基づく孤独感と、社会的な活動への参画の欠如に基づく社会孤立感を背景とする孤独感を区別している。 この二つの仮説を基礎として、社会的な自己同一性の確立のためには社会的な参画感をもたらす社会的役割の取得が必要であること、しかし今日の日本の社会においてはアメリカと同様に、社会的な参画を求めるよりは、衝動的欲求の充足を求める傾向が顕著に生じていること、それにも拘らず、衝動的欲求の充足による自己の確認からは社会的自己同一性は確立され得ないことを予測し、今日の社会に特有のさまざまな現象例えば、血液型性格関連説への関心の高まりなどもこのような観点から説明することが可能であるとの仮説を構成した。 30歳代から65歳の範囲の女性184名を対象した調査によって、仮説検証を試みた結果は、ほぼこの仮説が妥当することが示された。
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