研究概要 |
目的 日常生活とは異なる周期,つまり1日を24時間で過ごす生活から1日を25時間として生活させた際の概日リズムの適応過程を,概日リズムの位相差(朝型-夜型)の観点から検討した. 方法 被験者には朝型5名,夜型9名の女子大学生が用いられた.実験期間は被験者1名につき12日間で,この間携帯用体温計測装置および携帯用活動計(アクティグラフ)により連続的に直腸温・活動数が測定され,覚醒期間中には起庄直後,就床直前および偶数時刻に主観的眠けの測定が実施された.実験期間はコントロール期4日,シフト期(スライド・シフト)4日,回復期4日から構成され,コントロール期および回復期では普段通りの生活を要請した.シフト期では,就床および起床時刻を1日につき1時間ずつ遅らせて生活してもらった.すなわち,1日を25時間として被験者は過ごした. 成果 朝型-夜型間でシフト・スケジュールへの適応を比較した結果,シフト期間中の睡眠時間,コサイナ分析による体温および睡眠・覚醒リズムの周期については,いずれも夜型の方がより適応していることが推測された.すなわち,シフト期前半の睡眠時間は朝型で減少し,体温や睡眠・覚醒リズムの周期は夜型の方が25時間に近かった.しかしながら,体温のピーク時刻に変化がみられなかったため,完全な適応とはいえなかった.主観的眠けについては,朝型の方が眠けは少なく,とくにシフト期後半においてその傾向が顕著であったが,この差異はコントロール期でも観察されていたので,主観的に朝型の適応が良好であったとはいい難い.以上の結果から,スライド・シフトに対する適応に関して,朝型よりも夜型がよりよく適応していたことが示唆された.今後の展望として,朝型と夜型の被験者数のバランスをとること,近年リズム障害の治療に利用されている高照度光の効果(概日リズムに与える光の効果)を検討したいと考えている.
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